人は生きている間、呼吸をしています。眠っている間も起きている間も。意識せずとも呼吸をしてくれています。心臓の鼓動も意識せずとも脈打ってくれます。そのおかげで血流は流れ栄養や酸素や老廃物などを運び、複雑な体内の出来事の舞台を整えてくれます。

呼吸も鼓動も1日24時間を絶え間なく行われている生理活動ですが、鼓動と違って呼吸は意識的に早くしたり遅くしたり止めたりすることができます。呼吸は自律神経と大きくかかわっており、呼吸をコントロールすることは心身に大きな影響をもたらします。古来より丹田呼吸は心身を整えることのできる呼吸法として沢山のバリエーションをもって伝えてこられています。

ここでは、丹田呼吸の効用やそのやり方についてまとめていきたいと思います。

<丹田呼吸の効用>

●副交感神経を優位にし、落ち着いた(リラクックス)状態にする。

●内呼吸(肺でのガス交換)の効率を高めて、体内の酸素循環が高まる。頭がスッキリする。

●幸せホルモンであるセレトニンを分泌する。

●体内の燃焼効率を上げ、ダイエット効果がある。

●気力を充実させる

<病気・体調不良との関係>

丹田呼吸を行うことで、

・自律神経失調症の改善

・うつ病の改善

・不安症の改善

・不眠の改善

・パニック障害の改善・対処

・あがり症への対処

・頭痛の改善

・整腸作用

・肩こりの改善

など、様々な効果があるといわれています。

丹田呼吸と一言で言っても、本も沢山出版されており、サイトではこのサイトも含め無数にございます。

共通しているのは「丹田に意識を集中」ということであり、呼吸にかかわる体部の使い方、呼吸間隔、姿勢などさまざまです。

さまざまな丹田呼吸の中で、特徴を挙げると以下の通りです。

◆おへその下 約5cm下側にある丹田というツボに意識を置く。

丹田は不思議な場所で、古来よりここに体の重心を意識すると体は安定し、気持ちを丹田に集中すると落ち着きがでてくるといわれています。呼吸をするときに、心配事や急ぎの予定や宿題や今日あった嫌なことなどの雑念が湧くと心が大きく波立ちます。丹田を「底なしの壺」と表現する人もいます。意識を丹田に集中すると、雑念は丹田の中に吸収されて消えていき、心の波立ちを抑えることができます。

◆姿勢

座禅を組んだ状態(結跏趺坐:あぐらを組んで、右足を左腿の上に置き、左足を右腿の上に置く/半跏趺坐:片足だけを腿の上に置く)であったり、椅子に座った状態であったり、仰臥した状態であったりさまざまですが、背筋は丸めずにピンと伸ばした状態で行います。

◆腹式呼吸により、横隔膜を上下に大きく動かす。

自律神経は交感神経と副交感神経でできています。交換神経は神経バランスのアクセルの役割を持ち、副交感神経は神経バランスのブレーキの役割を持っています。ストレスなどでこの神経バランスが崩れると、耳鳴り・めまい・頭痛・うつ・不眠・動悸・消化不良・便秘・下痢・肩こり・冷え性・ほてり・生理不順・頻尿など様々な形での症状が現れます。自律神経の乱れによってこれらの症状を起こす場合を自立神経失調症といいます。

 腹式呼吸はおなかを膨らませて横隔膜を上下することにより肺が膨張収縮を行いガス交換を行う運動です。 この横隔膜周辺には自律神経が集中しています。元々呼吸は自律神経の作用により無意識に行われますが、意識をして呼吸することもできることから、意識をした呼吸により自律神経をコントロールすることができます。すなわち、腹式呼吸により自律神経失調症を改善することができます。

呼気で横隔膜が上がるときには、副交感神経が刺激され心身が落ち着きリラックスした気持ちになります。吸気で横隔膜が下がるときには交感神経が刺激されて心身が活発になり興奮や緊張した気持ちになります。

腹式呼吸で呼気・吸気の長さや強さをコントロールすることにより交感神経・副交感神経の活性化のバランスを調整することができ、心身を理想的な状態に近づけることができます。

◆呼気は長く

呼気については長くするのが良いようです。中には60秒かけて息を吐き切るなんてものもあります。毎日丹田呼吸を行っていると、いつの間にか呼気を30秒くらいかけて行うことができるようになります。呼気の時は副交感神経を優位にしますので、自然、落ち着きリラックスした状態になりやすくなります。

◆丹田呼吸の一例(観音流丹田呼吸)

上記のポイントを含み置いた上で、丹田式呼吸の一例をご紹介いたします。

1.姿勢

 座布団を2つに折った上に座り、あぐらか半跏趺坐で座り、背筋を伸ばします。両肩を少し後ろに引くように意識すると背筋が伸びます。手は両腿の付け根に置きます。

 顔は正面を向き、目線はやや斜め下に向けて、目は半分閉じた状態(半眼)にします。

2.意識

 自分の体の重心が、丹田にあるように意識します。また、考えたり感じたりするのも丹田で行っているように意識します。

3.息を吐く

 口をすぼめて、細く長く息を吐きます。この時、丹田のある下腹部から押し出すように息を絞り出します。少なくとも10秒以上かけて息を吐きだします。

4.息を吸う

 鼻から息を吸います。下腹部の力を抜くと自然に鼻から空気が入ってきます。丹田辺りにストンと空気が入ってくるように感じます。さらに胸郭を広げて、肺に空気を入れます。この間、数秒程度です。

3と4を繰り返します。

雑念が湧いてきても、その雑念について斟酌せずにほおって置きます(丹田の壺に捨てます)。

※3と4、また4と3の間に息を止める時間を数秒もうける方法もあります。

 3(息を吐く)後に息を止めると、リラックス感が続きます。

 4(息を吸う)後に息を止めると、氣力がみなぎります。

※心臓に疾患のある方は、息を吐く時間は短くした方が良いようです